「寒い日でも、上品に、そして暖かく。」
そんなわがままを叶えてくれるのが、ウールコートという存在です。
重厚でクラシックな見た目とは裏腹に、時代とともに〈機能服〉として磨かれ、ミリタリー・ワーク・テーラード文化の中で進化を続けてきた奥深いアイテム。
ウールコートの本質は、驚くほどシンプルです。
外の冷気は通さず、体温だけを上手に包み込む。
天然素材でありながら、現代の機能素材に負けない保温性と耐久性を備えています。
古着としてのウールコートは、単なる〈冬のアウター〉ではありません。
19世紀の英国紳士に愛されたチェスターコート、海軍が使い込んだPコート、職人の手仕事が光るツイードのロングコート。
それぞれが歩んできた歴史や文化が、シルエットやディテールに刻まれ、着る人の雰囲気を確実に変えてくれます。
この記事では、ウールコートの起源から現代までの長い歴史、ウール生地種類別解説、ケア方法からスタッフによるコーディネートまで、丁寧に奥深く掘り下げていきます。
↓こちらのマガジンでは、いつの時代にどの種類のコートが誕生したかを知ることができます。本記事と併せてご一読ください。
目次
ウールコート史
ウールコートは単なる「防寒着」や「ファッションアイテム」ではないです。
「気候」「技術」「軍事」「経済(貿易・植民地)」そして「社会的な身分表現」が複雑に絡み合って形を変えてきた、「社会の結晶」です。
だからこそ、歴史を掘れば掘るほど、コート一着が持つ意味や価値が見えてくるのです。
古代〜中世:ウール素材の始まり
・ウールの使用は紀元前数千年前から。
・寒冷地のヨーロッパでは最強の防寒布として重宝。
・服はまだローブやマントなどシンプルな形。
・良質なウールは富と権力の象徴でもあった。
中世〜ルネサンス:毛織物産業の発展
・フランドルやイングランドで毛織物産業が拡大。
・フルイング(縮絨)により分厚い布=メルトンの原型が生まれる。
・外套は「身分を示すファッション」へ進化。
17〜18世紀:軍用外套の誕生
・国家軍が整備され、『軍用のウールコート』が登場。
・代表例:グレートコート(将校用の重厚ロングコート)。
・織り、染色の技術が向上し、ウールが実用品として評価される。
➡ ここで現代のコートの原型が形づくられる。
19世紀:現代的ウールコートの完成
産業革命でウール生産が大量化、一般階級にも普及。
● 主なコートが次々誕生
・チェスターコート(1840s)
イギリス貴族チェスターフィールド伯により普及。
・ダッフルコート
ベルギー「Duffle」生地がルーツ。のちに英海軍で採用。
・Pコート
オランダ・英海軍発祥。厚手メルトン×ダブル仕様。
➡ 19世紀は「コートの種類が揃った時代」。
19世紀後半〜20世紀前半:軍服の規格化
・Pコート(海軍)やダッフル(英国海軍)が正式採用され定番化。
・都市生活者のためのテーラードコートも普及。
・高級仕立てと工場製の二極化が進む。
世界大戦期:機能性の極み+戦後の民間普及
・寒冷地作戦のため、軍用ウールコートがさらに高度化。
・WW1〜WW2ではトレンチ、Pコート、ダッフルが大量生産。
・戦後、余剰の軍用品が民間へ流れ、古着文化の礎に。
➡ 現代古着のメルトンや軍コートの多くはここがルーツ。
戦後〜70s:ブランド化と合繊の登場
・Burberry、Aquascutum などがファッション性の高いコートを展開。
・ナイロン、ポリエステル裏地で軽量化。
・50sのフォーマル → 70sのカジュアルへ変化。
80s〜90s:多様化とヴィンテージ価値の上昇
・80s:肩パッドでドレッシーなシルエット。
・90s:オーバーサイズやストリートが台頭。
・この頃のコートが現在ヴィンテージとして評価され始める。
2000s〜現代:復刻・サステナブル・ハイブリッド
・古典的なチェスター/ダッフル/Pコートの復刻が盛ん。
・ウールはリサイクルしやすく、リメイク文化と相性抜群。
・ウール×機能素材(防風・防水)のハイブリッドも増加。
・2010s以降はオーバーサイズ化&ユニセックス化が主流に。
ウール生地の種類と見分け方
ウールコートの質や雰囲気を決めているのは、実はディティールより生地です。
触った瞬間に重さや暖かさが分かるのも、見た時に年代感が伝わるのも、この素材の違いからです。
ここでは、押さえておきたいウール生地の代表格と、その見分け方をわかりやすくまとめました。
メルトン(Melton)

メルトンという名前はイギリスのレスターシャ州のMelton Mowbray という地名からきています。
メルトンは厚地のよく縮絨した織物で、表面は密に繊毛したナップ仕上げとなっており平滑です。普通は綾織の純毛で、安ものはたて綿、よこウールとなっています。
いつも単色で染められ、オーバコート、ユニホーム、礼服、乗馬服などに広く使われるウーレン織物です。
・見た目:表面が滑らかで密に詰まった“フェルト”状。起毛は少なめ。
・手触り:ずっしり重い、しっかりしている。
・使われ方:Pコート、グレートコートに多い。毛羽つき少なめ→防風性が高い。
ツイード(Tweed)

ツイードは太い羊毛を用い縮絨起毛をしない粗い感じのウーレン織物で、組織は主として斜文織です。
色彩、柄は単色、混色、ストライプ、チェックなどさまざまであるりこの織物の多くはスコットランドにあるツイード河(the River Tweed)の堤防に沿って建っている工場で昔から織られており、ツイード河から名前がとられたともいわれているます。
ツイードの応用範囲は広く、ジャケット、スーツ、スカート、オーバコート、帽子(ハット、キャップ)などとなります。
著名なツイードとして、Bannockburn, Bute, Donegal, Harris, Irish, Shetlandなど、その他多くのものがあります。
・見た目:斑(はん)やネップがあり、織り目が見える。色の複合的な混ざりも特徴。
・手触り:ざっくり、ごわっとしてる。
・特徴:英国のアウトドア/狩猟用に使われた。年代の古い物が見つかりやすい。
フランネル(Flannel)/フラノ

平織または斜文織で、軽く縮絨起毛した比較的薄地の紡毛織物です。
フランネルより地がしっかりしているので服地に適しており、スポーティーな感じのする生地なので、スポーツウェアや替スボンどにもよく用いられます。
• 見た目:柔らかく、軽い起毛がある。
• 手触り:ふんわり暖かい。
• 使われ方:チェスターやテーラード寄りのコートに使われることが多い。
ウーステッド(Worsted)
梳毛糸(woosted yarn)を用いて織った毛織物をいいます。
ウーステッドは一般に表面が滑らかでつやがあり、梳毛糸は比較的長い羊毛をよく引き揃えて、太さのそろった細くて均整な強い紡績糸をいいます。
• 見た目:光沢があり、織目がきれい。細番手の糸で織る。
• 手触り:滑らかで薄手〜中厚。ドレッシーな見た目。
• 使いどころ:フォーマルなチェスター系に頻出。
カシミヤ(Cashmere)/カシミヤ混

カシミヤはチベット、カシミール、イラン、イラク、中国の南西地区などから産出するヒマラヤ山羊から採取される毛です。
カシミヤの毛は染めないで自然のまま使われますが、その色は黒、ブラウン、グレー、白などがあります。
高価なのでいまではカシミヤの毛にウールを混紡して織物やニットをつくっています。
現在、カシミヤという用語はほんの少しのカシミヤを含んでいるものにまで無差別に使われてしまっています。
北インドのカシミール地方では手織りでカシミヤのショールが織られています。
• 見た目:毛足が短く細かく、非常に柔らかい。軽さと保温性が高い。
• 判別:毛を引っ張っても切れにくく、指で触ると明確な滑らかさがわかる。タグに“Cashmere”表記。偽物は混紡で安っぽさが出る。
ウールコートの正しいケア方法
ウールコートは暖かく上品な反面、扱い方を間違えると型崩れや毛玉が出やすい素材。
でもポイントさえ押さえれば、長く美しく着続けられる育てるコートになります。
着たあとの基本ケア(毎回やること)
ブラッシングが最重要
・ウール表面についたホコリや花粉、皮脂汚れを落とす
・繊維の流れが整って、ツヤを取り戻す
→ 馬毛ブラシや豚毛ブラシを使うのがベスト。
上から下へ一方向に優しくサッサッと。
風通しの良い場所で休ませる
コートはすぐクローゼットに戻さず、
1〜2時間ハンガーにかけて湿気を飛ばすと型崩れ&ニオイ防止になる。
保管のコツ
ハンガーは「厚みのある木製」を使う
肩の形が崩れやすいから、
ジャケット用の湾曲したハンガーが理想。
詰め込みすぎはNG
コート同士が擦れて毛玉の原因に。
5〜10cm間隔あけて吊るすと生地が長持ち。
湿気、虫対策
・防虫剤はコートの上部に置く
・除湿剤も合わせて使うとベスト
・通気性の良い不織布カバーが◎(ビニール袋は湿気がこもる)
シーズン中のメンテ
毛玉が出たとき
・毛玉取り機は「弱モード」
・理想は毛玉取り用ハサミで丁寧にカット
→ 生地の抜けや傷みを防げる。
匂いが気になるとき
ファブリーズのようなスプレーは湿気を含むからNG。
洋服ブラシ+陰干しで十分。
どうしても使うなら布用消臭スプレーの微量だけ。
汚れ・シミがついたとき
水拭きは基本NG(フェルト化の原因)
ウールは水に弱いので、
乾いた布で優しく押さえるだけにしておく。
油汚れや色の濃いシミはプロへ
無理に自宅洗いすると縮みや形崩れのリスクあり。
古着ならなおさら、クリーニング店に任せるのが安心。
オフシーズンのしまい方
1. ブラッシングして汚れを落とす
2. 1日ほど陰干しして湿気を完全に飛ばす
3. 肩が厚いハンガーにかけて、
不織布カバー+除湿剤+防虫剤でクローゼットへIN
→ これだけで次の冬も美しく着られる。
おすすめスタイリング2選
ウールコートは、きれいめにもカジュアルにも振れる万能アウターです。
「どう合わせたらいいかわからない」という人でも大丈夫です。
このあと紹介するスタイリングを参考にすれば、明日からのコーデがまた少し楽しくなります。
ウールコート×カジュアル


model:てっぺい
スタイリングポイント
黒のウールコートにグレーのハーフジップスウェットを合わせた、上品さとカジュアルさのバランスが光るスタイリング。
ゆるめのストレートデニムはロールアップで抜け感を作り、ローファーで大人っぽさをプラス。
キャップで程よくストリート感を足すことで、落ち着いた配色ながら都会的なアメカジに仕上がっている。
cap / ’47 / JAA000562 / ¥5,500(tax in)
sweater / J.CREW / EAA472646 / ¥10,890(tax in)
sweatshirt/ NAUTICA /RAB990349 / ¥5,390(tax in)
coat / GAP / RAC028669 / ¥8,690(tax in)
pants / Levi’s / RAB998800 / ¥7,590(tax in)
shoes / Kennes Cole / RAC050864 / ¥11,990(tax in)
ウールコート×アーバンスマート

model: てっぺい
スタイリングポイント
グレーのウールコートを軸に、ブラウン系のニットを差し込んだ『落ち着き×深み』のある冬スタイル。
アウターの上品さを活かしつつ、柄ニットで表情をつけているのがポイント。
ボトムはネイビーのスラックスで全体をすっきりとまとめ、足元はブラックのサイドゴアで品をキープ。
キャップで程よいラフさを足すことで、キレイめすぎず都会的に仕上がっている。
cap / New Era
sweater / Eddie Bauer / RAC040797 / ¥6,490(tax in)
shirt / Polo by Ralph Lauren / RAC014422 / ¥7,590(tax in)
coat / L.L.BEAN / RAB950662 / ¥11,990(tax in)
pants / Champion / RAB900511 / ¥4,290(tax in)
まとめ
ウールコートは、知れば知るほど奥深いものです。
特に古着は、一点物だからこそ、『背景を読み取れるかどうか』」で楽しさも価値も大きく変わると思います。
この記事が、あなたのウールコート選びや知識の底上げになれば嬉しいです。
ぜひ、古着屋JAM心斎橋店にお越しください!
スタッフ一同心よりお待ちしております。
毎日入荷!【古着屋JAM 公式オンラインショップ】をチェック

日本最大級の海外古着専門店 【古着屋JAM 公式オンラインショップ】では、
毎日数百点を超える新商品を掲載し、常にフレッシュな商品情報を随時更新しています。
お得で便利!古着屋JAM【公式アプリ】をダウンロード!
実店舗・オンラインショップでお使いいただける、古着屋JAM【公式アプリ】はお得で便利な機能が満載となっております。
■お得で便利な機能
①ポイントが全ブランド共通で貯まる!使える!
②最新の情報・コンテンツをいち早くお届け!
③オンラインショップがさらに使いやすく便利に!
また実店舗のお買い物で、【公式アプリ】の会員証をご提示でショッピングバッグが毎回無料になります!

この他にも、古着屋JAM【公式アプリ】はお得な機能が満載です!是非下記からダウンロードください。
【採用情報】株式会社JAM TRADING

一緒に古着ビジネスを通して、今日をもっとワクワクしませんか?
株式会社JAM TRADINGでは、正社員・アルバイトスタッフを随時募集中です。
全国の実店舗から、オンラインショップの商品準備まで様々な職種がございます。
自分次第で様々なことに挑戦できるやりがいのある環境です。
皆様のご応募をお待ちしております。


