「きちんとして見えるのに、堅苦しくない」。
そんな絶妙なバランスを持つのが【アイビースタイル】です。
一見、ジャケットやシャツを着ると聞くと、フォーマルで窮屈な印象を持つかもしれませんが、“アイビーは違います”。街歩きやカフェ、ちょっとした集まりにも馴染み、しかも上品さを保てる。これが半世紀以上愛される理由です。
紺ブレザーやボタンダウンシャツ、チノパンツといったシンプルな定番アイテムの組み合わせが魅力ですが、その根底には「清潔感」「程よい余裕」「学生らしいフレッシュさ」があります。
これらの要素は、現代のファッションにも自然に溶け込み、幅広い年齢層から受け入れられています。
今回は、王道アイビーを再現するためのポイントと、現代的にアレンジするコツ、アイビーを形づくる背景と文化をまとめてみました。
この記事を読めば、きっと店頭で試着するときもオンラインで選ぶ時も自分に合うアイビーが見つかるはずです。
目次
アイビーの基礎知識
アイビーとは?
1950年代のアメリカ東海岸、名門大学の学生たちが広めた服装がアイビースタイルの原点です。
紺ブレザー、ボタンダウンシャツ、チノパン、ローファーを基本に、上品なトラッドスタイルにスポーティーな軽快さを加えたのが特徴です。
現代のアイビーの楽しみ方
現代では、古着や現行品を自由に組み合わせる人も多くなりました。
ポイントは「清潔感・丈感・素材感」。
この3つを押さえれば、オンラインでも店頭でもイメージ通りのスタイルを手に入れられます。
アイビーを自分のスタイルに取り入れる3つのポイント
ベースカラーとアイテム選び
王道アイビーは、以下の組み合わせです。
・紺ブレザー(金ボタン付きが理想)
・白または、ブルーのオックスフォード生地のボタンダウンシャツ
・黒またはバーガンディのコインローファー
ただし現代的な着崩しでは、以下の代替案もおすすめになります。
・ジャケット→ネイビーカーディガン
¥25,190(tax in)/VTG051845
・ローファー→黒やネイビーのローテクスニーカー
・シャツ→ストライプや淡い色のボタンダウンシャツ
ベースを押さえつつ別のアイテムを用いて着崩すことで、自分のスタイルを確立することも可能です。
サイズ感で印象を作る
・ジャケットは腰回りがすっきり見える短丈
・パンツはノークッション~ワンクリック未満
・シャツは程よいゆとりで、ジャケットの中でも動きやすく
サイズ感はオンラインでも寸法表を参考にしやすく、店頭では、鏡の前で全身バランスを確認できます。
季節感を意識して素材選び
・春夏:コットンやオックスフォード地、サマーツイード
・秋冬:フランネルやツイード
写真や現物で「生地の厚み」「色の発色」を確認して選ぶと、季節感を出せます。
現代的なアイビーのポイント
現代のアイビースタイルは、単に昔のスタイルを再現するだけでなく、今の感覚に合った着こなしにアップデートされることが多いです。ここで大切なのは、アイビーの軸となる「清潔感」と「上品さ」を守りつつ、自分らしい崩し方を加えること。古着のジャケットをあえてワイドパンツと合わせたり、ローファーをスニーカーに替えたりするだけでも、全体の印象はぐっと現代的になります。
また、色使いや素材感を季節やシーンに合わせることで、堅苦しくならず、幅広いシーンで着回しが可能です。休日カジュアルから、ちょっとしたディナーまでカバーできるのも魅力です。
styling item
jacket1:Ermenegildo Zegna
【RAB837051】¥13,090(tax in)
tops1:RalphLauren size L
【RAB884222】¥6,490(tax in)
pants:POLO JEANS CO.RALPH LAUREN
【RAB914595】¥7,590(tax in)
アイビーを形づくる背景と文化
さて、アイテムとその組み合わせについて紹介をさせていただきましたが、アイビースタイルは、単なる服装の組み合わせではありません。その背後には、アメリカ東海岸の大学文化や戦後の若者社会、さらに日本におけるファッションの歴史にまでが深く関わっています。
1950年代、アイビーリーグと呼ばれる名門大学の学生たちは、勉学とスポーツを両立させるライフスタイルを送り、彼らの服装は「知的でありながら活動的」という新しい価値観を示しました。白いボタンダウンシャツにチノパン、紺のブレザーを羽織り、足元にはローファー。肩の力を抜いたその姿は、従来の堅苦しい正装から一歩踏み出したカジュアルウェアの先駆けとも言えます。
日本にこのスタイルが伝わったのは1960年代。石津謙介率いるVANジャケットがアイビーを紹介し、若者文化に大きな影響を与えました。当時刊行された写真集『Take Ivy』は、アメリカのキャンバスライフをリアルに切り取り、日本の若者に強烈な憧れを抱かせました。いわば、アイビーは“単なる服装”から“ライフスタイル”として受け入れられたのです。
季節ごとに変化する素材の意味
アイビースタイルをより楽しむためには、季節ごとに使われている素材の違いを意識することも重要です。
春夏の快適さ
オックスフォードクロスのボタンダウンシャツは、厚みがありながら通気性に優れ、日常着に最適です。また、インド伝統のマドラスチェックは色鮮やかで清涼感があり、夏のアイビーを象徴する柄となりました。
秋冬の重厚感
ツイードジャケットは英国由来の素材ですが、アメリカの学生たちにも、広まり、知的で落ち着いた雰囲気を演出しました。さらびグレーのフランネルパンツは秋冬の王道。柔らかな質感で、ブレザーやニットと組み合わせれば、一気に季節感が出ます。
このように「素材と季節」がリンクしているのもアイビーの魅力であり、単に色合わせだけでない奥行きを感じさせてくれます。
ディティールに宿る豆知識
細かなディティールを知ることで、アイビースタイルは一層面白くなります。
ボタンダウンシャツの襟ロールアメリカ製のシャツは襟が長く、立体的に丸みを帯びてロールします。これが「本場らしさ」を感じさせるポイント。一方で現行品は襟が短くフラットになりがちで、この違いを見抜けると上級者の視点になります。
ネクタイのストライプの向き
英国のレジメンタルタイは左上から右下ですが、アメリカでは逆向き。伝統を倣いつつも自分たちの独自性を示したと言われています。
ペニーローファーの名前の由来
甲部分の切れ込みに1セント硬貨(ペニー)を入れられるデザインからその名がつきました。学生たちの遊び心がスタイルになった好例です。
こうした豆知識を知っていると、ただ着るだけでなく「語れるスタイル」として楽しめます。
小物で完成度を高める
アイビーは派手な装飾を必要としません。むしろ、小物の使い方が完成度を左右します。
ホワイトソックス
ローファーに合わせると清潔感が増し、学生らしさを強調。
細めのレザーベルト
上品で全体を引き締める役割を果たします。
クラシックな眼鏡フレーム
黒縁やべっ甲柄は当時の学生によく見られた定番。
アイビーが今も愛される理由
最後に、なぜアイビースタイルが半世紀以上経った今も色あせないのか。その理由は「誰にでも開かれているスタイル」であることに尽きます。
きちんとして見えるのに窮屈ではなく、清潔感があるのに気取ってない。少しのアイテムで完成するシンプルさがある一方、素材やディティールに目を向ければ奥深さも備えている。だからこそ、初心者はすぐに挑戦でき、上級者は知識や工夫でさらに楽しむことができるのです。
アイビーは単なる服装のジャンルではなく、時代を超えて共有できる“知的なカジュアル”の象徴と言えるでしょう。
あとがき
アイビースタイルは「基本形を押さえて自分らしく調整する」だけで完成します。色、丈感、素材の3つを意識すれば、店頭で実物を見るときも、オンラインで写真を見ながら選ぶ時も、失敗しにくくなります。
アイビースタイルを学ぶことは、ただ服を着ること以上のや意見です。背景を知ることで、同じシャツやパンツでもまったく違う見え方をしてきます。ひとつの服の歴史を知ると、日常がより豊かになります。ぜひ、ご自身のクローゼットの中からアイビーの要素を探し、実際に袖を通してみてください。そこから生まれる新たな発見が、日常の楽しさを何倍にも広げてくれるはずです。
まずはシャツやチノパンツなど取り入れやすいアイテムから始めてみましょう。
古着屋JAM梅田茶屋町店でも、ジャケットから、ボタンダウンシャツ、チノパンまで種類豊富なアイビーアイテムを取り揃えております。