私の収集癖 Vol.1 -アウトドア編- | 古着屋JAM

古着の面白さであり魅力でもある「収集」。
歳を重ねるごとにそれは「収集癖」となり、気づけば古着にどっぷりハマってしまう──。そう、古着好きは誰しもが少なからず収集癖を持っていると言っても過言ではありません。

古着屋JAMには、そんな収集癖を持つ人たちが多く集まっています。
彼らが隠し持つさまざまな「収集癖」に注目し、「私の収集癖」と題してインタビューを実施。その中で、収集の醍醐味を探ってみました。

記念すべき第一回は
(バイヤー・田中哲太)

学生時代には大手リユースショップで働き、就職活動後は古着屋JAMのECオンラインショップの出品や運営を担当。その後、現職であるバイヤーとして約9年間、世界を飛び回りながら活躍している。

彼がアウトドアに親しんだのは、幼少期に親がキャンプなどのアウトドア活動を楽しんでいた影響からだ。物心ついた時には、アウトドアアイテムや環境が当たり前のように身近に存在していたという。

そんな彼の収集癖は「アウトドアアイテム」。
今回は特に好きだという3つのアイテムに焦点を当てて紹介していく。

ダウンジャケット

古着への興味が広がる中で、自然と集まってきたのが「ダウンジャケット」だという。現在、その数はおよそ20点以上。
「アウトドアが好きというのもあって、つい手が伸びてしまうんです」と語る彼。気がつけば、クローゼットを埋め尽くすまでになったのだとか。

共通点が見えてくるという面白さ

インタビューをする中で見えてきた、彼の収集することの醍醐味。
それは、「共通点が見えてくるという面白さ」にあった。
最初に紹介してくれたのは元パタゴニアのデザイナーが立ち上げたブランド「Cloudveil(クラウドベイル)」の中綿ジャケット。
パタゴニアのダスパーカとこのCloudveilのエンクロージャージャケットはアイテムの作りが似ているという。

「シェルの生地感やポケットの仕様、タグの形状まで各ディテールにパタゴニアの影響を感じます。」

古着屋JAM

Patagoniaのダスパーカ(左)とCloudveilのパーカー(右)
仕様が似ている

古着屋JAM

タグの印字のされ方やデザインが似ている

その次に見せてくれたのが“Ajungilak(アユンギラック)”というブランド。

このブランドはノルウェーのスリーピングバッグ専門メーカーであったが、2001年MAMMUTに買収されなくなってしまったという。
しかし、買収された後もMAMMUT×ajungilakとして仕様は残されているのだとか。

このように反映されているデザインや仕様などを見つけた時の面白さが堪らないという。そして、“両方のブランドを持っておきたい”という「収集癖」から、似たようなアイテムがどんどん集まっているようだ。

自宅のクローゼットにはアウトドアブランドを中心としたアイテムが所狭しと並んでいた。

田中哲太的No.1ダウンジャケット

REI/アールイーアイ
エクスペディション系ダウンジャケット

コレクションの中でも特にお気に入りだというのが、REIの極寒地向けに作られたエクスぺディション系のダウンジャケットだ。
「当時のラインナップではおそらく最高峰のもので、保温力はもちろん、着たときのボリューム感が気に入っています」と語る。

当時、ノースフェイスの「ブルックスレンジ」をはじめ、REI以外の小さなブランドからもエクスぺディション系のダウンが数多く販売されていた。しかし、その多くは生産数が少なかったのか、ヴィンテージ市場ではほとんど見かけることがないという。
「だからこそ、大事にしています。もし他のブランドのものに出会えたら、購入して仕様を見比べてみたいですね」。

古着の世界でも希少性が高いエクスぺディション系ダウンジャケット。彼のこだわりが、その魅力をさらに引き立てている。

ナイロンジャケット

色んな物を試したくなる“探究心”

さらに彼の収集アイテムを見ていくと、様々なアウトドアブランドが幅広く集められていることに気づいた。

―ARC'TERYXの「LEAF」ラインが持つ特別な魅力

「これはARC'TERYXの米軍向けに生産されていた『LEAF』ラインの ALPHA LT JACKET というモデルです」。彼がそう紹介する一着は、並行輸入を取り扱う店舗で新品購入したという。
通常の ALPHA LT モデルと異なり、LEAFラインは軍用仕様のため、目立たないカラーリングや控えめなロゴ刺繍が特徴だ。また、使用されているシェル素材も通常のGore-Texではなく、よりハイエンドなGore-Tex Proが採用されている。「正直、機能面の違いはよくわからないんですが(笑)」と語りつつも、その特別感には心を奪われるようだ。

「ARC'TERYXのハードシェルは、やっぱり洗練されたカッコ良さが魅力ですね」。デザイン性と実用性を兼ね備えた一着に対する愛着が伝わってくる。

―EARLY WINTERSの90年代ナイロンジャケットに込められた革新性

最近、よく手に取るのがEARLY WINTERSのナイロンジャケットだという。このアイテムは、90年代の比較的新しいモデルで、特に印象的なのはその総柄プリントに施された「illumiNITE」技術だ。暗い場所でプリントが光る仕様になっており、非常にユニークだと話す。
背中部分にはサイクリングジャケットのようなポケットがあり、「おそらく自転車用として作られたのでは?」と思われるが、実際のところはどうかはわからないとのこと。しかし、こうしたディテールがこのジャケットに特別な魅力を与えているようだ。
EARLY WINTERSは1970年代に創業し、世界初のGORE-TEX素材を使用したテントを開発したことで知られるブランド。新しい技術に対する意欲が高く、90年代においてもその姿勢を貫いていたことに感銘を受けたと言う。「このブランドの時代時代の新しい技術を取り入れる姿勢が好きですね」と、彼はその魅力を語った。

ブランドによって形やディティール、デザインなども違えば、作られた背景も異なる。
その違いの面白さや種類の豊富さに魅了され、色々試してみたいという“探究心”で20点以上も収集してしまうという結果に繋がったのだろう。

バッグ

実は、彼の古着好きになった原点がここに存在していたのだ。

この話については、1月3日に公開される「私が古着を好きになった理由 VOL.2」にて紹介させていただく。乞うご期待。

それぞれのプロダクトが持つ背景に強い魅力がある

原点であっただけに偏愛ぶりを見せてくれた。

アウトドアのバッグは軍用に使われていたキャンバス地の重たいリュックから始まり、1960年代頃から今日に至るまで、KARRIMORやLOWE ALPINE、GREGORY、さらにはデイナグリーンソン(KLETTERWERKS / DANA DESIGN / MYSTERY RANCHの創業者)など、多くのブランドが技術と快適さを切磋琢磨し合って今の形が生み出された歴史があるという。
「そういった歴史の中で、先人たちが知恵を絞って生み出した形やディテール、そしてそれぞれのプロダクトが持つ背景に強い魅力を感じ、出会いがあればつい収集してしまいます。」と語りながら、彼は大きなウォークインクローゼットからさまざまな種類のバッグを出してきてくれた。

古着屋JAM

海外出張時の愛用バッグ

古着屋JAM

バイヤー歴9年、肌身離さず愛用しているという
実用的なミニショルダー

次に紹介してくれたのが、一番多く使っているというTIMBUK2のメッセンジャーバッグ。
サンフランシスコ発で、3パネルデザインが特徴。使いやすさはもちろん、発色の良さと豊富なカラバリが魅力だと言う。

「メッセンジャーバッグに関してもアウトドアと少し文脈は違いますが、すごくカルチャーを感じるジャンルなので、似たような理由でつい出会いがあれば買ってしまいますね。
TIMBUK2は西海岸発だからなのかスタイリッシュっていう感じのブランドではないんですが、僕はこのブランドが持つ少しいなたい雰囲気が好きです。L.L.BEANとのダブルネームものがあったり、アウトドア物とリンクしているのも面白いです。」

今回は3つのアイテムを通して収集する醍醐味を語ってもらったが、
最後に、田中哲太が思う「アウトドアアイテム」の魅力について聞いた。

"最も快適なものは何か"を追求している点です。

「いわゆるファッションブランドとは異なり、ファッション性よりも機能性を重視し、各ブランドが「最も快適なものは何か」を追求しています。

現在の有名なアウトドアブランドの多くは、60年代から70年代に創業が始まり、80〜90年代にはそれに続く多くのブランドが誕生しました。調べてみると、小さなガレージブランドから始まったものが非常に多いんですよね。

創業者の多くはクライマーで、実際のクライマーたちが「自分たちが着たいもの」や「快適なもの」を追求する中で人気を集め、やがて大きなブランドへと成長した例が多いです。

ブランド創業者の探究心から生まれたアイテム、たとえば創業当時のジャケットやバッグ、テントなどは、他社との差別化やオリジナリティが強く反映されており、その思いがしっかりと込められています。そういった意味で、さまざまなブランドに魅力を感じ、創業当時のアイテムや、そのブランドが自信を持って作ったアイテムには特に惹かれ、実際に手に取ってみたくなります。」

そんな彼のオリジナルでつくったアウトドアグッズたち
「TETA “MOUNTAIN APPROACH”」

ここまで、田中哲太のアウトドアアイテムの収集癖をご覧いただきましたが、いかがだったでしょうか。これを読む前までは単なるアウトドアアイテムに過ぎないと思っていた物も、さまざまな背景や歴史、その時代の思いを知ることで、違った角度から見ることができ、物自体の価値も変わることでしょう。

古着の面白さのひとつは、「収集」にあります。収集をしてきたからこそ気づけることや、そこにある面白さもきっとあるはずです。

収集とは、ただ単に集めることではなく、物語や思いが込められていることに気づく過程だと実感しました。思い返せば、もしかしたらあなたも「これって収集癖かも」と感じたのではないでしょうか。

次回もお楽しみに。

アウトドアブランド一覧

  • 古着屋JAM パタゴニア

    Patagonia

    パタゴニア

  • 古着屋JAM ノースフェイス

    THE NORTH FACE

    ノースフェイス

  • 古着屋JAM アールイーアイ

    REI

    アールイーアイ

  • 古着屋JAM シエラデザインズ

    SIERRA DESIGNS

    シエラデザインズ

  • 古着屋JAM シエラデザインズ

    Columbia

    コロンビア

  • 古着屋JAM オービス

    ORVIS

    オービス

  • 古着屋JAM ウールリッチ

    WOOLRICH

    ウールリッチ

  • 古着屋JAM エディーバウアー

    Eddie Bauer

    エディーバウアー

  • 古着屋JAM アークテリクス

    ARC'TERYX

    アークテリクス

田中哲太の
好きなアウトドアブランドBest3

REI

アールイーアイ

「アメリカ最大級の総合アウトドアショップのREI。アメリカ出張時に寄った際はお店作りのスケール感、壮大さにいつもワクワクさせてもらっています。」

THE NORTH FACE

ノースフェイス

「アイコニックなデザインが多いので時代のトレンドによって気分の浮き沈みはありますが、機能性も含めやはり良いなあと思うモデルがたくさんあるので好きです。個人的には70年代のノースのリップストップダウンベストはダウンベストの完成系だと思います。」

patagonia

パタゴニア

「アイテムの革新性、アイテム幅の広さ、企業の価値観、取り組み、やっぱりどれを取っても他ブランドよりも一歩先を行っていると思います。」

「私の収集癖」

番外編

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