朝晩の冷え込みが強くなってきており、冬の匂いが漂いつつある今日この頃。
冬の定番アイテムとしてウールニットは誰しもが一着は持っているのではないでしょうか。
ウールニットといってもその種類は様々です。
ハイゲージやローゲージ、無地のシンプルなものもあれば、総柄の季節感じる冬らしいものも…
なかには伝統的なウールニットもあります。
伝統的なニットには柄や編み方による人の想いやメッセージが隠されております。
今回はそんな様々な想いやメッセージをひもといていきます。
目次
アランニット（フィッシャーマンセーター）
「アランニット」とは、「フィッシャーマンニット」とも呼ばれ、アイルランド西岸のアラン諸島が発祥と言われております。
漁業が盛んであったアラン諸島でしたが、大西洋に囲まれ、強風が年中吹き荒れるため、漁師たちにとっても厳しい環境でありました。
そんな環境のもと、漁に出る夫を寒さや濡れから守るために、島の女性たちによって「アランニット」は編まれました。
本来の色味を活かした、油分を含むウールを使用しているため、撥水性があり、太いウールを厚みの出るケーブル編みによって分厚く編むことで、高い防寒性も実現しています。
アランニットセーターの独特の編み模様には、漁に出る夫や息子の無事と豊漁を願う女性たちの祈りの意味が込められています。
その組み合わせは、編み手によって異なり、家紋の様に扱われていました。水難事故等で岸に打ち上げられたときには、着ているセーターの柄でその身元が判断できたといわれています。
アランニットの編み模様
そんな「アランニット」の編み模様が示す意味や象徴の、代表的な4種類をご紹介いたします。
ケーブル（網）
ケーブル編み模様の「アランニット」は、 漁師たちが使う船を引く際の縄が表されているほか、命綱の意味もあり、安全祈願の願いが込められています。
また交差する縄の模様は、結婚や子孫の繁栄を意味するともいわれております。
トリニティステッチ（ブラックベリーステッチ）
トリニティステッチ編み模様の「アランニット」は、漁師たちを守る願いが込められており、砦や荒波を防ぐ石垣などが表現されています。
また、編み模様がブラックベリーに似ているため、「ブラックベリーステッチ」とも呼ばれております。
ハニカム（蜂の巣）
ハニカム編み模様の「アランニット」は、漁に欠かせない網を表現しているという説や、ハチの巣に似ていることから働きバチのような勤勉さへの礼賛を表します。
ダイヤモンド
ダイヤモンド編み模様の「アランニット」は、 ひし形状に編まれ漁師のカゴの中身がいっぱいになることを表し、成功や大漁を願う意味が込められています。
ガンジーセーター
「ガンジーセーター」はガンジー島で生まれたフィッシャーマンセーターです。
ガンジーセーターは全てのフィッシャーマンセーターの元になったと言われており、直線で作られたシンプルなセーターです。
シンプルな作りですが、現代には見られない特徴的なディティールがあります。
前後がないデザインは漁師が暗闇の海でも前後を気にせず着用できる、汚れたら前後裏返して着ることができるなどの利便性を追求して生まれたもの。
肩・脇下のマチ
普通のセーターにはない一番の特徴として襟ぐりの両肩部分に「三角のマチ」、両脇下に「ひし形のマチ」が付いており、これは動きやすいように可動域を広げる効果があります。
また、前後がないデザインは漁師が暗闇の海でも前後を気にせず着用できる、汚れたら前後裏返して着ることができるなどの利便性を追求して平面的な作りになっております。
アームホール部分のディティール
アームホールとは腕の付け根部分のことでアームホールのボディ側には「ガーター編み」、アーム側には「２目ゴム編み」と呼ばれるディティールが施されております。
裾のサイドスリット
裾の両サイドにスリットが入っており、こちらも肩と脇下のマチと同じく動きやすさを考慮したディティールです。
袖口は普通のセーターと同じでリブ編みですが、裾はガーター編みになっております。
また、着丈を短くしフィット感をタイトにしながらも、動きやすいという実用性に特化したセーターです。
ノルディックセーター
「ノルディックセーター」とは、その名の通り、北欧ノルウェーに古くから伝わる「ノルディック柄」のセーターです。
北欧を彷彿させる、トナカイや雪の結晶などのモチーフや幾何学模様、点描を用いた柄が特徴です。
北欧という寒冷地という環境から、全体に編み込み模様を入れ、二重に編むことで厚手に仕上げ、保温性を高めているため、「ノルディックセーター」には厚手のものが多いのも特徴です。
「ノルディック柄」がどこか温かみやノスタルジックな雰囲気が感じられるのには、実際に厚手のものが多いことや、北欧の伝統的な柄ということから想像ができます。
ノルディック柄の種類
「ノルディック柄」には、様々な柄が存在し、北欧の自然を感じる柄が多く存在します。
ここでは代表的なモチーフを3種類紹介いたします。
雪の結晶
「ノルディック柄」のルーツである、北欧の気候を彷彿とさせる雪の結晶をモチーフとした柄です。ニットの中の大きなアイコンとして入っていたり、連続した柄として用いられることがあります。
トナカイ
「ノルディック柄」の産地のスカンジナビア地方で、古くから家畜として飼われていたトナカイは、現地の人の生活の中で、重要な存在であったことから描かれるようになったとされています。
ツリーオブライフ
「ノルディック柄」には、生命の木とも呼ばれるツリーオブライフが用いられることも。大木に長生きや一族の繁栄を願って描かれるようになったとされ、簡略化した柄も同じものを指すとされています。
フェアアイルニットセーター
「フェアアイルニットセーター」とは、イギリススコットランドのシェットランド諸島のフェア島が発祥とされていて、カラフルな色使いの幾何学模様が数段に渡っていることが最大の特徴です。
このモチーフの由来は様々な説があり、フェア島に住む人たちの家紋、自然風景、雪柄、スペインの無敵艦隊がフェア島に難破して伝わったムーアの矢など、400年以上の歴史をもつ伝統的な柄です。
また、軽くて暖かいシェットランドウールが使われていることも大きな特徴です。
シェットランドウールは、とても暖かく、そして弾力があります。少し力を入れてニットに触れると、その弾力性を感じることができます。
12月に入ろうとしておりそろそろ冬本番です。
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